2000年のひとりごと
*歯科情報新聞に憤りを感じます(2000年12月29日)
先月この場で「補綴学会で質問をしてきた」(11月26日)という報告をしましたが、その報道がある歯科関係の新聞に掲載されました。私がマイクを持って質問している姿が写真になっているので驚きました。ところが、私の名前が無くて「開業医から意見が出された」という報道なのです。質問に立った教授の名前ははっきり出ているのに、顔写真まででている私の名前がないなんて、やはり開業医は軽視されているとしか言いようがありません。私が質問したことを取り上げてくれたのでこの新聞を買おうかと最初は思ったのですが、内容を見て止めました。やはり許せません。
*なぜ術後経過を出さないのだろう?(2000年12月4日)
大学の臨床でも術後経過が発表されて嬉しいのですが、一般的には術後経過がきわめて少ない現象です。なぜ術後経過が出ないのか考えてみました。 1.術後経過が大切だと思っていない。もしほんとうに術後経過が大切だと思えないなら、それは大変なことで、臨床自体を大切だと思っていないことになる。 2.術後経過を出したくとも出せない。これは納得できます。過去の処置は今から見ると未熟で恥ずかしいと思うのは誰しも。 3.対比する資料が揃わない。X線写真やスライド写真が、対比できるように保存していない。これも納得できる。でも努力すべきでしょう。 要するに、術後経過を発表するということは、過去を引きずっている醜い姿を衆目に晒すという非常に厳しい試みであると理解してほしい。それだけに、発表した方には並大抵の努力がないとできないことでしょう。ただ、見る側にそういった評価をする心構えが備わっているかどうかが問題なのです。1症例でも良いから、術後経過を追いかけると分かってもらえるのですが・・・。
*補綴学会で初めて質問してきました(2000年11月26日)
11月10〜12日に大阪で日本補綴歯科学会がありました。補綴学会のシンポジウムのような大会場ではとても恥ずかしくて質問できなかったのですが、今回は初めて質問をしてきました。疑問を感じて質問をしたというより、内容が素晴らしかったので何かを言いたくてたまらなくなって発言しました。鶴見大学の福島俊士教授の発表のなかで、遊離端ブリッジの術後経過報告があり、2年経過時からトラブルにみまわれた発表に、私は非常に共感しました。私は延長ブリッジの術後経過がおもわしくなくトラブルが多くてあまりやりたくないと思っていたものですから、67欠損は補綴しなくても良いのではないかと質問しました。さらに、「短縮歯列」を認めてもいいのではないかと申し添えました。それと、鹿児島大学の長岡英一教授の発表で、下顎左右犬歯だけが残存している症例で、術後経過14年追跡されている姿勢に感銘を受けました。しかもその犬歯が、支持組織の骨が1/3〜1/4失われているような状態でしたから、よく保存したなと思われるような歯でしたし、それが1歯が4年、もう1歯が14年持っていることに驚きとともに感動を覚えました。大学の臨床で、術後経過を追っているということでも大変なのに、それが10年以上もフォローしていることが嬉しくて、そういう教育こそ必要なことだと訴えてまいりました。大学の臨床も変わってきたナーと嬉しい気持ちでした。
*いいものが市販されない歯科界(2000年11月5日)
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私の大好きな咬合器で、Hanau 130-7です。デザインといい、工作精度といい、触っていて楽しくなる咬合器です。顆路型コンダイラー型で、顆頭間距離が変えられる咬合器です。10年以上前から製造停止で入手困難です。どなたか余っていたら、ぜひ譲って下さい。
矢崎式咀嚼運動器もまた私が好きな咬合器です。これも製造停止で入手できません。咀嚼第4相だけを再現することに絞った咬合器は、独創的理論に裏打ちされた単純機構の咬合器です。
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金子一芳先生が開発されたSplit-Cast Plateは(株)東京技研製造、(株)ジーシー販売でしたが、これも製造停止で入手できません。チェックバイト法を用いた咬合器への顎運動のトランスファーは、このSplit-Cast
Plateを使うことで飛躍的に精度が向上できたのに、その価値が多くの方に評価されることなく終わるのがもったいない気がしています。
Split-Cast Plateはまとまれば作ってくれそうですが・・・ |
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チェックバイト法といえば、前方チェックバイトしか教わらない学生教育では、咬合器の真価が体験できず、卒業後も咬合器を使おうという気運がわかない。側方チェックバイトを採得して、このSplit-Cast
Plateを用いて患者さんの顎位をトランスファーすることを1度でもやっていれば、咬合器に対する認識が大きく変わっていただろうと思います。
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*自家歯牙移植への誤解(2000年10月23日)
欠損歯列に対する処置のオプションとして、インプラントか自家歯牙移植かという適応における討論がよくされます。両者に対して、多くの利点欠点が挙げられます。1.インプラントの利点・欠点:・供給はいくつでもある、・手術が容易、・二次カリエスがない、・費用がかかる。2.自家歯牙移植の利点・欠点:・歯根膜の存在、・智歯の有効利用、・加圧要素の歯を減らすことができる、・術式が困難、・歯槽骨の量(幅)が必要。 さらに大きな差は、両者とも咬合支持を得るために行われるのはメリットであるが、骨との癒着か、歯根膜支持かが大きく異なる。歯根膜支持であれば、ブリッジの支台歯にもなれるし、咬合接触関係も通常通りで対合歯にも問題がない。 もっとも大きな違いは、自家歯牙移植が加圧要素を減らして受圧条件をよくして、受圧・加圧のアンバランスを改善できることです。 「どうして自家歯牙移植なの」という素朴な質問には、欠損歯列の術後経過を追って悪戦苦闘してきた体験がない歯科医には、残念ですがなかなか分かってもらえないことかもしれません。ぜひ欠損歯列の術後経過を追いかけて下さい。きっと分かっていただけると思います。
*かかりつけ歯科医になろう(2000年10月23日)
4月からの歯科健康保険で「かかりつけ歯科医初診」が新設されました。どういう訳か分かりませんが、全国的にあまり進められていないようだと聞きます。私は大きな誤解をされているのではないかと思います。もともと歯科診療は、かかりつけの形態を備えていると考えています。あらためて何か新しいことを進めるということではないと認識しています。「歯医者って良いよねー」と産婦人科医の姉兄3人(姉と義兄2人)から言われます。「産婦人科医は、女性だけが患者さんで、しかも10歳から50歳までだもの」。歯科医は、男女にかかわりなく、幼児からお年寄りまでが患者さんです。その上、0歳検診とか寝たきり在宅往診診療なんて患者さんを拡大しているわけですから、国民すべてが対象なのです。そして、家族みんなを診ていくという診療形態は、まさにかかりつけ歯科医の姿ではありませんか。 私は以前から、かかりつけ歯科医の診療形態にしていきたいとすら思っておりました。したがって、今回の「かかりつけ歯科医初診」の新設は、待ってましたという感覚です。詳細は、日本歯科医師会雑誌10月号をご覧下さい。
*なぜ総義歯のセミナーがもてはやされる?(2000年10月16日)
総義歯はほんとうに難しいですか? 私は総義歯でセット後に悩んだことなどありません。二次カリエスで悩んだこともありませんし、歯周炎に苦しめられることもありません。ましてやプラークコントロールのモチベーションで苦労することもありません。なのにどうして、総義歯で困っている歯科医が多いのでしょう? 不思議でなりません。印象採得や咬合採得が難しいのでしょうか? 粘膜相手の総義歯に比べ、歯牙と顎堤粘膜が混在しているパーシャルデンチャーの印象採得の方が難しいはずです。咬合採得だって、現存歯や噛み癖に左右されるパーシャルデンチャーの方が難しくなります。
ほんとうに総義歯が難しいのですか? もう一度お考えください。
*経過観察しないなら、どんな処置でもできる(2000年10月16日)
自分で処置した患者さんを、5年、10年、15年とフォローしようとする姿勢があれば、自ずと節度ある治療しかしません。ところが、経過観察しない歯科医は、その後の責任も感じないので、どんな治療でもしてしまいます。「先のことなど分からない」というのも本音かもしれません。先が分からないから、記録を残して経過観察していくことが必要なのではないでしょうか。経過観察の結果こそ、どんな教科書より身になる気がしております。
*術後経過のない論文は、読まない(2000年10月16日)
華々しく紙面を飾っている論文も、術後経過がなければ読まないことにしています。情報が氾濫しているこの時期、経過観察のない論文まで読む時間がもったいない。術後経過が出てきてから読んでも十分間に合うだろうと考えています。インプラントの症例報告も最近は術後経過が述べられていて、好感が持てます。歯科関連出版社の編集に携わっておられる方にもお願いいたします。症例報告には是非術後経過をつけるようにお願いしてください。歯科専門学会の認定医検定のケースプレゼンテーションも、術後経過が義務づけられています。
*社保指導者研修会の講師をして感じたこと(2000年9月15日)
9月5日に社保指導者研修会に講師として呼ばれました。社保指導者というのは、各県庁の厚生省技官、各県保険審査員、県の保険担当理事、それらの関連の総勢600名の方々です。開業医が講師になることも珍しいし、普段は指導を受けている身でありながら、その指導者に向かって何かを申し上げるのも、とても面はゆくてやりにくく感じました。打ち合わせ会で、厚生省医療課の先生と話す中で、私自身の偏見と誤解に気づかされました。医療費抑制策と療養担当規則ガチガチの方々ばかりだと思っていたのですが、現場の臨床が大変よく分かっていて、歯科医師会の意向もよく分かっておられるのには、いささか驚かされました。私は次の2点を訴えてきました。
1.X線写真の規制を外してほしいとお願いしました。枚数や期間、パノラマとデンタルの同時請求、精密検査時の全額X線写真などへの規制です。指導料や基本検査などの形に残らないものに比べて、X線写真は記録がはっきり残るもので、架空請求など絶対にあり得ないものです。とくに、パノラマとデンタルは撮影法が異なるし、読像できるものも違います。一般医科では、胃の検査でパノラマ大のX線写真が同時に4〜6枚認められているのに、歯科ではパノラマ1枚だけというのは、格差が大きすぎます。
2.「補管」(補綴物維持管理料)が認められるなら、「現存歯維持管理料」も認めてほしいとお願いしました。補綴物が大切なのですか、歯牙の方が大切なのですか、と訴えました。
*「インプラントの流行にひとこと」(200年8月18日)
10年前、5年前に比べて、確実にインプラントへの評価が高まってきたし、今では成功が当たり前になってきました。それは喜 ばしいことです。臨床レベルがある程度の歯科医が行っているものについては、予知性もあり成功率も高いといえます。ただし、
X線写真が診断できるレベルに至っていない術者が行っているのには、依然として目を覆いたくなります。自分のX線写真のレ
ベルに気がついていないことが問題なのです。ついで、欠損歯列の読み方・診断ができない方がインプラントを行っているのは どうも気にかかります。「義歯がうまくいかないからインプラント」、「患者さんが取り外し義歯が嫌だといっているからインプラント」
という発想の術者が問題です。欠損歯列が読めないから義歯がうまくできないのであって、補綴の診断が先決なのです。せめて、Eichnerの分類、咬合支持指数、咬合三角、くらいのことは常識程度と認識すべきです。 インプラントは自費診療で、高額
な医療ですから、訴訟も多いと聞きます。術後のアフターケアーの体制が十分とれることが必須です。術後の経過観察もなく、 リコール体勢もなく、顧客名簿も完備してない歯科医院が問題です。経過観察できる体制、すなわちX線写真と口腔内カラー写
真が術前術後で比較できるレベルにあることが最低限必要です。
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