★雑誌編集ウラ話 2006年バックナンバー

この8月号が最後の仕事になります(2006年8月)

今年の3月、任期満了で会誌編集委員を辞任しました。8月号までが編集責任でしたから、この8月号で最後の仕事になります。3期9年間をつとめました。過ぎてしまえば短い感じですが、9年間は長かったと思います。編集会議は年間6回ほどですが、原稿依頼と校正や企画案の提出、読書評、編集後記などがあって、毎月会議をやっているような気がします。9月号からは新たな編集委員で始まります。
編集委員を今回はどうしても辞任したくなりました。理由は2つあります。その1つは、会誌がカラー化できないことです。いまどき、歯科関連雑誌でカラーでないものは会誌以外にはありません。1億円のウラ献金事件以来、日本歯科医師会は大きく改革をすすめ、学術を中心に活動するというので、会誌のカラー化を訴えましたが予算がないという一言で無視されました。その後、郵送改革で会誌の郵送料が安くなり、会報と同時郵送もできることで数千万円の余剰金が生まれたので、それを会誌のカラー化に使って欲しいと訴えました。これもうやむになり、口絵カラー1ページだけ毎号となりました(それまでは隔月)。カラー化が9年かかっても実現できなかったので、もうあきらめです。
もう1つの理由は、日本歯科医師会に嫌気がさしたことです。1億円のウラ献金事件以来、日本歯科医師会は改革をすると言いながら、何ら変わっていないことです。あれほど苦労してようやく「かかりつけ歯科医」が保険導入され、「メインテナンス」が保険に導入されたことは、保険歯科医療のあり方として画期的でした。疾病保険から予防保険にシフトしかかったのに…、今年の改訂で大幅後退となりました。国民の保健や医療保険のあり方などにまったく考慮のない改訂は、今後の医療保険の方向性に期待も夢も持てないということが判明しました。こんな無謀な保険改訂に日本歯科医師会は打つ手を持たないし、すでに6ヶ月が経つのに具体的な方策が打ち出されない。もうこれ以上は日本歯科医師会に協力する気が起きません。

会誌編集委員をやっていて、たくさんの嬉しいことがありました。表紙のデザインについておもしろいと言ってくださったり、ようやく読める雑誌になったとお褒めを頂いたり、励ましを頂きまして、本当にありがとうございました。深く感謝します。

編集委員を辞任したとたんに、原稿依頼が来ました。来年の1月号と2月号の連載です。これを最後に日本歯科医師会雑誌とは縁を切りたいと思います。もし興味がありましたら、新年号をご期待下さい。今まで読んで頂きまして感謝申し上げます。

2006年8月号から

中川正晴先生の「学校歯科保健活動を活用したリスク管理の歯科臨床」は、地域の歯科医師会活動と学校歯科保健活動とのドッキングです。中川先生は米沢市の歯科医師会長を3期続けて、口腔衛生学を専攻していたこともあって、米沢歯科医師会の会員と一緒に学会活動もしてきました。CO(要観察歯)はどのようなものか、最初に齲蝕に罹患するのは?、罹患の仕方、など興味ある文面が続く。齲蝕リスクに関するコメントがうれしい。11年以上も活動を続けるとは大変なことです。これらの成果に東北地区歯科医学会から表彰され、厚生労働大臣からの表彰状もある。地域の歯科医師会が米沢市の方式を参考にして地域住民に貢献できるようになることを期待する。

石井正敏先生の「歯科における禁煙支援(指導)」は、たばこと歯周病との関連性についての警鐘と禁煙指導の実際を述べています。石井先生は40年も臨床をやってきて、自分では成功を予測した症例が、期待に反して予後不良になった場合の共通因子が重度喫煙者だったというところから疑問がスタートしています。1991年、1992年と文献を挙げその結果を紹介している。1996年Papapanouのメタ分析や2000年のAxelssonのRCT検討論文などからも喫煙と歯周病の関連性を力説しています。私も10年ほど前から禁煙を強く勧めています。喫煙者には歯周病の外科手術を行わないとまでしています。近年禁煙ムードが高まったとはいえ、禁煙指導の成功率は高くないようです。この論文から参考にできることが色々あります。

加藤広之先生の「側方加圧根管充填の臨床技法と根管の整備」は、側方加圧根充の集大成と言える内容です。加藤先生はかねてより側方加圧根充の問題点を指摘して、その技法の成功率を上げるためのノウハウを発表してきました。今回はさらにイメージを持ちやすくするためのイラストや写真を多用して、分かりやすく解説しています。スプレッダーの使い方やアクセサリーポイントの考え方がよく分かります。

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2006年7月号から

高橋敬人先生の「歯周治療の流れから処置を再考する」は、この4月の大幅な保険改訂にあって現場の混乱を避ける目的から、治療の流れを考えてみようというスタンスで解説されています。3年や5年で歯周治療が変わっては困るということを、症例を呈示しながら述べています。1996年にだされた「歯周病の診断と治療のガイドライン」から、保険診療における歯周治療の流れが二転三転しました。とりわけ、かかりつけ歯科医が導入されてから変更され、メインテナンスが導入されてからは大幅に流れが変わりました。これでようやく歯周治療に積極的に取り組めると思って間もなく、今回の大幅改訂です。やる気をなくした先生方が多いのではないでしょうか。10年前に後戻りです。それでも患者さんのことを考えれば、歯周治療にシッカリと取り組まなければならないのです。「責任感の強い、患者さん想いの歯科医ばかりがバカを見る」ということにならないように願っています。この論文を読んで、気を取り直して頑張りましょう。

中嶋省志先生の「エナメル質初期齲蝕の再石灰化の原理とフッ化物の役割」は、齲蝕が脱灰と再石灰化の繰り返しのダイナミズムの中から発生するということに解説を加えています。エナメル質がなぜ表面から脱灰されないで、表層下脱灰病変が見られるのか、不思議です。まだまだ、齲蝕のメカニズムの解明が充分ではないようです。表層下脱灰病変の診断は、平滑面ではできても、咬合面では容易ではないという。なぜ難しいのか、齲蝕のメカニズムと近年の研究結果と方向性から解説しています。齲蝕のメカニズムを理解して、再石灰化の仕組みを考えます。そこにフッ化物がどう関われるのか、現時点での解説だが、この道30年の蘊蓄を読み取れます。

鷹岡竜一先生の「初期治療の意味を考える」は先月号に続く連載です。これほどX線写真を見事に並べられる歯科医は少ない。私は若い歯科医に向かって「X線写真1枚見れば実力が分かる」と大口をたたいてきました。歯科医としての実力が上がればあがるほど、X線写真が向上するという臨床研修の体験から実感したことです。紙と印刷がそれほど綺麗に仕上がらない歯科医師会雑誌でも、これだけ綺麗に印刷されているのは、元のX線写真がすごく綺麗だからです。X線写真の読み方を詳細に緻密に解説してくれていて、それがよく分かる臨床例が提示されて、明快な解説とともに充実した内容です。つい引き込まれるほどの重い内容と見事な文章力です。

神田 貢先生・橋本猛伸先生の「8020運動の実績調査報告」は、兵庫県歯科医師会が行った広範な調査をまとめたものです。現存歯数が多い人ほど全身的にも健康なのではないかという仮説を確認する調査です。平成14年の兵庫県歯科医院に1ヶ月来院患者さんで、70歳〜89歳の国保35,325名の調査です。現存歯数が多い群は、全身疾患が少ないということが分かった。無歯顎者の1ヶ月分の診療費は、20本以上現存歯数者に比較して、約9,800円多かったという。分析が始まったばかりだということなので一部のみの報告なのが残念です。これらのことがエビデンス作りに役立ってくれればと願っています。

2006年6月号から

鷹岡竜一先生の「初期治療の意味を考える」は、口絵のカラーページを飾る見事な論文です。初期治療とは、トピックな話題ではないけれども、これほど治療の成否を決めるモノはないのでは?
著者の緻密な臨床、きめ細かな観察眼、着実なステップ、どれをとっても見事としかいいようがない論調は、大いに参考になります。「術者の思惑・患者の思惑」という章では、日常よく遭遇するスレチガイを納得できる文章で解説しています。「磨け!磨け!では治らない」というところも、よく細かく臨床を見つめている姿勢が感じられて、すごいナーと感服させられます。症例写真も見事ですし、X線写真も非の打ち所がないできばえで、ため息が出ます。全ページをカラーにできないのを、とても悔しいと思います。(これが理由で、今期を最後に編集委員を辞任しました)。是非ご一読を!

伊藤和雄先生の「新しい齲蝕検知液と確実なデンティンボンディング理論」は、接着に長い年月取り組んでこられた先生ならではの充実した論文です。コンポジット・レジン充填の接着システムは、まるで流行のようにめまぐるしく材料とシステムが変遷してきました。約30年間、それに振り回されてきて、もういい加減にしてほしいと思うのは私だけでしょうか。エナメル質接着と象牙質接着が異なることに関しても、一般に認知されていないようです。その証拠に、レジンコアーがこれほど普及しているのですから。コントラクションギャップのできない接着システムに取り組んで17年になるそうです。その間に多くのシステムが氾濫して消滅していきました。私は今まで、流行に惑わされずに、伊藤先生のシステムを行っています。やや面倒ですが…、最近は慣れてきました。

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2006年5月号から

武藤克己先生の「ブラキシズム」は、矯正専門医ながら、ブラキシズムに注目して長年取り組んできたことを伺わせる内容です。矯正専門医だけの問題ではなく、一般臨床家にとっても示唆に富んだ内容が網羅されています。

2006年4月号から

冨田 寛先生の「歯科医療と味覚障害」は味蕾地図研究の第一人者です。今回は歯科に中心をおいて歯科医にまず訪問する味覚障害の患者さんに、どのように対応するかを分かりやすく解説してくれています。下顎孔伝達麻酔や矯正治療のワイヤーについての注意喚起は、大変示唆に富んだ解説です。是非ご一読を。

2006年3月号から

香山リカ先生の「臨床家にとって大切なもの」は連載されてきた「人間と科学」の最終回です。「モノから心、そして脳の時代へ」から始まり「傾聴」こそ診察室での基本という論調は、見事に訴えるモノがあります、わが日本で、自殺者が3万人もいるという現実、毎日80人以上の人が自らの命を絶つこの国は、はたして先進国家なのでしょうか。

2006年2月号から

特集として「歯科医師臨床研修必修化対応マニュアル」が取り上げられました。90ページにも及ぶ内容も濃く多岐にわたっての記事が掲載されています。臨床研修が必修化されたことによって、一般会員にはどのようにかかわりがあるのか、どうかかわっていけばいいのか、読みながらご検討いただきたい。

2006年1月号から

角田正健先生の「口臭の原因と対応について-その2」は12月号と連載です。実際の診断から患者対応の細かなことまで述べてあって大いに参考になります。「心性口臭」についても具体例を挙げての説明は分かりやすいです。

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