★雑誌編集ウラ話 2005年バックナンバー

2005年12月号から

福本 忍先生の「咬合検査用フィルムの臨床的活用」は、12ミクロンの検査フォイルを使って咬合チェックを行うことへの助言です。このフォイルは私も気に入って使っておりますが、あまり知られていないようです。このフォイルの開発にあたって、従来の咬合紙の厚みを調べたデータが紹介されています。20〜30ミクロンだと思っていたジーシーの咬合紙が、実は40ミクロンあったということが分かりました。それで、ジーシーの咬合紙のチェックで大丈夫だと思っていたのに、「まだ高い」と患者さんから言われることがあったことに納得しました。

角田正健先生の「口臭の原因と対応について」は、最近増えつつある「口臭」を主訴として来院される方が多くなってきたことに対応できる情報が書かれております。難しい心因口臭についての解説もあります。2回シリーズで1月号との連載です。

2005年11月号から

筒井昌秀先生の「歯周組織に配慮した印象採得」は、筒井先生のあの魔法の歯肉をそのまま持続しながら修復セットまでのプロセスを解説されています。扉のカラーグラビアも参考にしてください。筒井先生の手品のような臨床を余すところなく書いていただきました。あとはどれほどマネができるかな?

2005年9月号から

真鍋 顕先生の「残存歯数に目を向けたパーシャルデンチャー」は、考え方に共通する部分が多く、読み応えのある論文です。真鍋先生は、35年ほど前に医科歯科大学補綴大学院在学中、IRV (歯間空隙閉鎖型テレスコープ)を日本に紹介したときから 注目していた先生です。アイデアマンで、臨床テクニックも卓越し、素晴らしい方だと思っていました。論文内容も、残存歯数を守ること、マウスプレパレーションを重要視し、経過観察をしっかり行っておられる希有な臨床家です。熟読されることを期待します。

石井みどり先生の「今後求められるかかりつけ歯科医機能」は、現日本歯科医師会常務理事としての地域歯科保健のこれからの方向性を示唆する有益なメッセージです。介護保険の動きから、今後の医療保険制度の方向性も読めます。従来より、「治療」に軸足をおいた診療室完結型の歯科サービスが、「予防」「治療」「ケア」が一体的、連続的に機能する「かかりつけ歯科医」へと向かい、診療室非完結型の方向へと向かうだろうと提言しています。歯科衛生士も、4年制大学が創設されるにあたり、診療室完結型から、診療室非完結型に変わり、地域や職域の幅を広げた活動が必要だと示唆しています。

仲川雅晴先生の「口腔という環境におけるチタンの問題点」は、インプラントを使っているものにとって注意を喚起する内容です。インプラント周囲炎によって埋入5年後に撤去したインプラントのネック部が腐食を起こしていたという事実や、フッ素入り歯磨き剤を使用した場合のチタンの腐食実験から、警鐘を鳴らしています。先月の井上先生の「インプラントを予定する患者さんには、チタンアレルギーテストが必須です」という警鐘とも合わせて、インプラントにはいろいろ検討課題が出てきています。

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2005年8月号から

広田 勤氏の「長寿への不安」は、「平成16年簡易生命表」から端を発した「「長生きの不安」を解説している。一般生活者の83%が「年を取って高齢者になることに不安を感じる」という。そして、4割の方が「長生きしたいとは思わない」というアンケート結果は、かなりショックです。高齢化社会への日本の対応には不満を感じています。

新谷明喜先生の「歯冠用ハイブリッド型レジンの臨床」は、臼歯部への歯冠色補綴の期待がありこれから楽しみなものです。患者さんの歯冠色修復への要望はますます増え続けています。安定した臼歯部歯冠色修復物が期待されています。と同時に、過去には破折に悩まされた経験も多くあります。慎重にと思うのは私だけではないと思います。どれほどの安定性があるのか、臨床例での術後経過の報告が知りたいと思い文章を追いましたが、その記載は見あたりません。臨床例には、いつ修復したのかの年月日の記載もない。セットしましたという臨床報告なら、研修医でもできます。臨床記録の基本である年月日記載と、その後の経過観察と考察が欲しいものです。いま、EBMの必要性が叫ばれています。臨床家ならまだしも、大学の先生からEBMの見本を示して欲しい。

2005年7月号から

井上 孝先生の「歯科臨床と臨床検査-その2-」は、先月号に続き臨床家ができる諸検査を解説しています。「唾液検査」「ドライマウス検査」「味覚異常検査」「金属アレルギー検査」など、日常頻度の高い検査が解説されています。

井出吉信先生の「誤嚥防止への解剖学的考察」は、歯科医にとって関連性の深い「嚥下障害」「誤嚥」などの解説を解剖学的考察で述べています。咀嚼と嚥下は、口腔、咽頭、喉頭領域の関連性を機能的に良く理解することが必要だと説いています。その上で、誤嚥を予防する手だてが見つかると解説しています。

2005年6月号から

奥田克爾先生の「健康破綻に関与する口腔内バイオフィルム」は、誤嚥性肺炎や心臓疾患など全身の健康破綻にかかわることを解説しています。デンタルプラークの実態はバイオフィルムであり、その除去は困難です。毎日の臨床で患者さんと共に戦ってるプラークコントロール、昔は80%取れればオペに行けると言っていたことは、今も通用するのでしょうか? 手用歯ブラシだとバイオフィルムはせいぜい50%しか取れないと言われるようになりました。私達はバイオフィルムに関する知識をしっかりと持ち、患者さんに説明できるようになりたいものです。と同時に、全身との関連性も、どんどん新しい研究成果が発表されていますので、最新の話題として患者さんのお話しできるようになりたいものです。

井上 孝先生の「歯科臨床と臨床検査」は、開業医でもできる術前検査の解説がされています。数百万人はいるとされるC型肝炎とB型肝炎、さらには増加の一途にあるHIVなどの性感染症患者が私達の歯科医院を訪れているという。観血的処置の多い歯科治療では、きわめて危険なことです。にもかかわらず、一般の歯科臨床では簡単な問診と診察のみで、臨床検査が行われることはまずありません。簡易採血による方法と「簡易濾紙法」による血液検査を解説しています。採血の方法や、検査依頼先や保険適応の解説まで、きわめて懇切丁寧な説明です。さらに、感染予防についても解説しています。次号と2回連載です。

五味博之先生の「根管治療に伴う痛みとその対応策」は、解説が学術的で大いに参考になります。ただし、症例解説に関しては、そのデンタルX線写真に不満が残ります。症例1と症例2のX線写真は、術前と術後の角度が余りにも違うために比較ができるかどうか。症例3、症例5についても同じような撮影です。大学の先生方にこのような記述が多く、理論的解説はすばらしく、教えられることが多いのですが、いざ臨床になると、途端にトーンダウンしてしまうのです。歯内療法ならX線写真が中心です。術前・術中・術後のX線写真が、ほぼ同じようなアングルで撮影されたもので論じて欲しいと思います。そして、術後経過が必須だと思います。この論文では、5症例とも術後経過がありませんでした。日本歯科医師会雑誌でも、何度かX線写真についての解説がされていますので、是非熟読されることを願っています。

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2005年5月号から

宮地建夫先生の「歯科臨床データ収集と集計」は、データ集積がいかに患者にとって有用かを述べています。小林茂之先生と高柳篤史先生と共著となっています。臨床家が疫学的統計をとるということばかりにとらわれないで、臨床記録の活かし方を考えながら有用な臨床データの収集を行いましょうと呼びかけています。「症例数と症例報告」、「臨床データの特性」など、興味のあるテーマについても、具体例を挙げて解説されています。

藍 稔先生の「歯科医療の専門医制度」は、近年話題の専門医標榜に関する解説です。現在、歯科では日本口腔外科学会、日本歯周病学会の2つが認可されています。広告が可能な専門医ということで、広告規制の緩和政策とも相まって、急にクローズアップされてきた問題です。専門医制度は本来患者への情報開示と適切な医院選択の参考のためにあるものです。ところが最近の、麻酔医による医療事故多発が社会問題化しています。医科では、専門医の数が医師の数の倍くらいいるという矛盾した現象から、見直しが始まりました。歯科の専門医制はこれからですが、専門医と認定医の違い、専門医の資格取得のありかた、専門医資格認定学会の選定など、検討課題が山積しています。

2005年4月号から

猪越重久先生の「侵襲の少ない審美修復としてのコンポジット・レジン充填」は、齲蝕検知液をうまく利用して、ミニマルインターベンションの処置を提唱している。猪越先生は現在は台東区で開業ですが、1997年まで医科歯科大学で助教授をなさっておられました。それだけに、論文の構成がしっかりしていて読みやすく論理的です。5月号に連載されますのでそれもお楽しみに。

蒲沢文克先生の「ブリッジのトラブルを臨床記録から検討する」は、開業医ながら臨床記録をまとめていて、素晴らしい論文です。毎日の診療の傍らで、臨床記録を整理してまとめて分析するのは大変なことです。しかも、10年以上の経過観察のデータを集計するのは大変なことです。日本歯科医師会の会員が、自らの臨床記録を取りながら集計することを、みんなで進めたいものです。

2005年3月号から

松下和夫先生の「クラウンの咬合調整量を考える その2」は、前号に続いて模型の咬合状態が口腔内における咬頭嵌合位を正確に再現できないことがもっとも大きな問題と説く。模型の製作法がどのように影響するかの解説があります。そのうえで、どのような印象採得を行うか、咬合採得をどうするかの解説があります。私は、この松下先生の原著論文(22年前)に触れてから、間接法を考えるきっかけができました。それ以降、院内技工士と何度も試行錯誤を繰り返しながら、当医院のシステムを確立してきました。間接法がなければ歯科技工補綴物は完成できません。コーヌスクローネに取り組むようになって、なおさら間接法が重要だと思っています。コーヌスクローネは金型実験に匹敵する適合精度を求められるからです。多くの方々がコーヌスクローネから撤退していったのは、この間接法のシステム確立がうまくいかなかったことによると言っては言い過ぎでしょうか。

土屋賢司先生の「審美修復治療」は、日本歯科医師会雑誌としてはあまり取り上げてこなかったテーマの「審美」をタイトルにした論文です。カラーグラビアと一緒にご覧ください。とてもきれいです。日本歯科医師会雑誌がカラーでないことにずーっと不満を持っていました。編集会議ではいつもカラー化を訴えてきました。政治連盟にお金を使うなら、日本歯科医師会雑誌をカラー化することくらい容易なことだと訴えて、実現を迫りましたが、力不足でまだカラー化はできません。カラー化できなければ「審美」や「歯肉問題」などは語れないと思います。それでいままで「審美」の記事が取り上げられなかった理由です。

2005年2月号から

松下和夫先生の「クラウンの咬合調整量を考える」は、間接法を考える出発点になる論文です。松下先生は、22年前に間接法を考えるためのもっとも基本的で重要な研究論文(歯冠補綴物の咬合面精度に関する研究--全部鋳造冠の製作過程が咬合の高さに及ぼす影響--)を発表しております。ところがあまりにもそのことを知られないでいる状況に、憤りすら感じておりました。再生療法、インプラント、レーザー、などの論文を多く目にしますが、日常臨床で何度も経験する鋳造修復物の咬合調整量に疑問を感じないのは不思議な気がします。松下先生の論文(この論文の参考文献に掲載されている)は22年前のものなのに、ちっとも色あせていないのが不思議なくらいです。研究論文の見本のような論文です。考察も臨床的な視点から疑問やコメントもつけられていて、大いに参考になる論文です。クラウン・ブリッジの大学院修了者ですら、この論文を読んでいないというのを聞き、驚いています。是非読んでください。

板東永一先生の「チェアーサイドでの咀嚼・顎運動検査」は、なかなか難しいけど重い論文です。板東先生はIPチェッカーなどの電子計測器の開発にめざましい業績を上げた方です。6自由度顎運動計測器はなかでももっとも有名な業績です。顎運動計測器を実験室に置くだけでなく、チェアーサイドで患者さんに使えるようにならないかという難しい課題に取り組んでこられた論文です。いつも臨床を見つめながら研究をしておられる数少ない研究者のお一人です。是非読んでください。

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